コリアニュース №624(2015.10.5)
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国連総会第70回会議における朝鮮民主主義人民共和国外相の演説

朝鮮民主主義人民共和国の李洙墉外相は10月1日に国連総会第70回会議で演説を行った。

その要旨を以下に紹介する。

 今日、われわれは国連が歩んできた70年を振り返り未来を設計する重大な歴史的時点に立っている。

世界はこの間、数百に及ぶ大小の戦争や武力衝突を経験しながら、何度も核の惨禍に見舞われる寸前にまで至った。

人類が求めるのは、壊れやすい薄氷のような平和ではなく、盤石で強固な恒久的平和である。

主人に従属しなければ得られない奴隷の「平和」ではなく、自主的な人間として当然享受すべき尊厳高い平和である。

そのような平和は未だ人類にとって夢のままである。

 世界ははるかに前進し時代は大きく変わったが、国連の平和と安全を保障する機構と機能は、創立初期の旧態から抜け出せずにいる。

安全保障理事会の専横と非民主主義的弊害が未だ克服されていないこと、それによって国連という神聖な国際機構がごく少数の列強たちの独壇場、対決場として絶えず盗用されてきたこと、そのため世界の平和と安全が絶え間ない脅威にさらされ、人類が戦争の危機に直面しながら生きていくことに不本意ながら慣れてしまっていること、これが国連の70年の歴史を暗いものにしているもっとも大きな失敗であり、未だわれわれの未来への道を塞いでいるもっとも大きな挑戦である。

 国連憲章に記された主権平等の原則が実践で完全に具現化されない限り、国連で支配主義や不平等、不公正性が根絶されることはない。

国際関係が真に民主化されない限り、国連はいつまで経っても国際的平和と安全を守る自らの使命を遂行することはできない。

それどころか、国連は平和と安全を破壊する勢力の隠蔽・偽装のための機構へとさらに転落してしまうだろう。

これが国連の70年を振り返りながらわれわれが得た主な教訓である。

 70年の国連の歴史には、不幸と苦痛がしみ込んだわが人民の70年の民族分断史が刻まれている。

国連が創立された年、わが民族は日本帝国主義の植民地から解放されたが、同年に外部勢力によって北と南に分断された。

その外部勢力がいま国連安全保障理事会の常任理事国の席に着いている。

国連は創立当初から今日このときまで70年の長きにわたり、わが民族の自主権と尊厳、平和と安全を絶えず蹂躙する道具として徹底的に盗用されてきた。

 1948年に南朝鮮で「単独政府」をねつ造し、わが民族の分裂を固定化させた米国の策動に「合法性」を付与したのがまさに「国連朝鮮委員団」である。

1950年、朝鮮戦争に米国と15の追従国家の軍隊が被ってきたのがまさに「国連軍」の帽子である。

1975年の国連総会第30回会議で、南朝鮮における「国連軍司令部」を解体し全ての外国の軍隊を撤退させるという決議が採択されたが、この決議は米国が賛成しない他の決議と同様に履行されなかった。

今日、南朝鮮ではどの国よりも多い4万人近い米軍の大兵力が駐屯している。

南朝鮮に駐屯する米軍司令官はまさに「国連軍司令官」の帽子を被っている。

数十年間、米国が南朝鮮で毎年複数回行っている大規模な核戦争演習がまさに「国連軍司令官」の指揮下で行われている。

国連安全保障理事会は21世紀に入ってからもわが国に対しては、正義と国際法を無視する乱暴な専横を続けている。

 今日の世界には、宇宙空間を利用することを各国の自主的な権利として明示した国際法があり、衛星を打ち上げる国は10カ国を超えるが、国連安全保障理事会は唯一朝鮮民主主義人民共和国に対してのみ衛星打ち上げを禁止するという不法な「決議」をつくり上げた。

世界的にすでに9カ国が核兵器を開発し核実験は延べ2000回以上も断行されたが、唯一朝鮮民主主義人民共和国に対してのみ核実験を禁止する「決議」をつくり出された。

昨年も米国は事実無根の「人権報告書」などをねつ造し、国連総会や安全保障理事会でさらなる反共和国キャンペーンを繰り広げ、その結果、国連が今も米国の盗用物にすぎないことがあらわになった。

 平和的宇宙開発は国際法によって付与された主権国家の自主的権利であり、核実験は米国の敵視政策や核の脅威に対処した自衛的措置である。

平和的衛星打ち上げを問題視する不当な行為に対してはあらゆる自衛的措置によって最後まで強硬に対応し尊厳を守ることが、わが国政府の確固たる決心であり立場である。

 国連憲章は安全保障理事会が正義と国際法の原則に従って行動することを規定している。

しかし現在の国連は憲章が優位にあるのか、安全保障理事会決議が優位にあるのか判断し難い混乱状態に陥っている。

国連のもっとも大きな責任と権限を担う安全保障理事会が個別の列強に愚弄され、これほどまでに分別のないものになってしまったことは21世紀における悲劇だと言わざるを得ない。

 去る8月、朝鮮半島ではまたしても交戦直前にまで至る事態が起こった。

原因不明の小さな事件が発端であったが、明白なことは、このような事態が米国と南朝鮮が行う大規模な合同軍事演習が頂点に達する度に起こるという事実である。

憲章に記されたメンバー国の権利にしたがって、朝鮮民主主義人民共和国は、米国と南朝鮮が繰り広げる侵略的で挑発的な大規模な合同軍事演習が国際平和と安全を危うくする行為であると安全保障理事会に提訴し、8月に起こった事態についても安全保障理事会に提訴した。

しかし、安全保障理事会はその度に沈黙をくり返した。

情勢緊張の悪循環をつくり出している大規模な戦争演習を指揮するのがまさに「国連軍司令官」である中で、国連に一体何ができるというのであろうか。

 論理的に説明できないおかしな現象はこれだけではない。

朝鮮民主主義人民共和国が国連に加入してから20年以上が過ぎたが、未だ板門店には朝鮮民主主義人民共和国の国旗と国連の旗が相対しながら掲げられている。

言い換えるなら、国連が自らのメンバー国と互いに銃口を向け合う交戦関係にあるということである。

歴代の国連事務総長は、南朝鮮にある「国連軍司令部」は国連が管轄する機構ではなく、その解体問題は唯一安全保障理事会だけが決定することのできる問題であるという立場を表明してきた。

結局、拒否権を持つ常任理事国の米国が同意しない限り、「国連軍司令部」はいつまでも解体することができないということである。

したがって朝鮮半島では、「国連軍」すなわち米軍、国連イコール米国という方程式が成り立っている。

 国際平和と安全のためにも、そしてわが民族の安寧と繁栄のためにも、国連は一日も早く憲章の目的と原則に立ち戻り、朝鮮民主主義人民共和国との非正常な関係を正さなければならない。

 8月の事態は国連と非正常な関係にある朝鮮半島に現存する平和がどれほど脆弱であるかを明らかにした。

今回の事態を冷静かつ慎重に分析した結果、導き出される一つの結論は、名ばかりの現在の停戦協定では朝鮮半島においてこれ以上平和を維持することはできないということである。

停戦協定は当初、このような侵略的で挑発的な大規模戦争演習は許していなかった。

停戦協定を平和協定に替える問題は、誰よりも米国が英断をくだすべき問題である。

現在北南関係は、なんとか緩和の局面に至ったが、この雰囲気は未だ確かなものではない。

些細な挑発でもあれば、一瞬にして緊張が高まり、北南関係が膠着状態に陥るのが朝鮮半島情勢の特徴である。

東北アジアだけでなく、全世界が息をのんだ今回のような事態まで起きてしまった今日、停戦協定を平和協定に替えることは、一刻の猶予も許さない切実な問題となった。

朝鮮半島の平和を守る上では、北と南が議論すべき問題と朝米間で議論すべき問題がある。

1953年の停戦協定が朝鮮人民軍と中国人民支援軍を一方とし、「国連軍」を他方として締結されたとしても、他の外国軍隊は全て撤収した後、朝鮮半島に展開されている武力の統帥権を持つのは朝鮮民主主義人民共和国と米国のみである。

南朝鮮の戦時作戦統制権を持つのも米国であり、停戦協定を管理するのも米国である。

今こそ、米国が平和協定締結に応じるべき時である。

米国が停戦協定を平和協定に替えることに同意するならば、わが国政府は朝鮮半島で戦争と衝突を防止するための建設的な対話を行う用意ができている。

米国が大胆に政策転換をするならば、朝鮮半島の安全環境は劇的に改善され、米国の安全保障上の憂慮も解消されるだろう。

 これが、過去70年を振り返り歩むべき今後の道を見据えた国連の演壇で、われわれができる最高の選択であり、提案できる最高の方法である。

 朝鮮民主主義人民共和国は、停戦協定を平和協定に一刻も早く転換することが、朝鮮半島において国際平和と安全を担保し、われわれと国連の間の非正常な関係を正す道であると確信する。

(了)

●「朝鮮中央通信社」(日本語) http://www.kcna.kp/goHome.do?lang=jp

●エルファテレビ  http://www.elufa-tv.net/


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