コリアニュース №753(2018.8.6)
印刷
ASEAN地域フォーラムにおける李容浩朝鮮外相の演説文(全文)

議長先生。

私はまず、ASEAN地域フォーラム外相会議を主催し、参加者を親切に歓待してくれている、シンガポール共和国政府に謝意を表します。

また、6月に成功裏に行われた朝米首脳の対面と会談のために素晴らしい条件と便宜を提供してくれたシンガポール政府の誠意ある協力に、再度、謝意を表します。

ここシンガポールで朝米関係史上初めて行われた首脳対面と会談はアジア太平洋地域の情勢の発展に最も深遠で肯定的な影響を及ぼした重大な出来事でした。

長い間、敵対関係にあった国家間でもお互いに信頼を醸成すれば、対話と交渉で地域と世界の平和と安全保障問題を解決していけるということを示したことに、シンガポールの首脳会談が持つ巨大な国際的意義があります。

アジア太平洋地域は、その地政学的位置と日々増大する巨大な成長の機会に、戦略的重要性が拡大し続け、世界的な介入が増えており、それにより多くの複雑な問題点も新たに生まれている地域です。

この地域で大国の利益が互いに衝突する問題が発生し悪化しており、その過程で、地域の国々の団結と協力関係、情勢安定に不利な影響を与える要素が現れています。

発展と繁栄の必須条件である地域の平和と安全を危険にさらす事態が頻繁になっています。

このような時こそ地域の国々は、地域問題の解決の主人、当事者としての自主的立場をさらに確固に堅持して団結と協力を強化していくべきでしょう。

私は、朝鮮民主主義人民共和国が「東南アジア親善および協助条約」に加入してから10周年になる意義深い年に、朝鮮半島情勢で画期的な転換を遂げ、地域全体の平和と安全に意義深い寄与をすることができるようになったことを特に嬉しく思います。

私はこの機会に、朝鮮民主主義人民共和国・国務委員会委員長である金正恩同志の大胆な決断と平和守護の意志、精力的な実践活動により、朝米関係の新しい歴史のページが開かれ、朝鮮半島と北東アジア情勢に根本的に新しい肯定的な気流が形成されたことを心から支持歓迎してくれた地域の国々に、深い謝意を表します。

自主権尊重、平等、互恵の原則で、地域のすべての国と友好協力関係を積極的に発展させ、ASEAN地域フォーラムの信頼醸成と予防外交実現のための共同の努力に、引き続き貢献しようとするわれわれの立場に変わりはありません。

議長先生。

朝鮮半島に形成された平和と安定の新しい気流は、アジア太平洋地域の全般情勢の安定的で建設的な発展のために、地域のすべての国が共同の努力で積極的な関心をもち大事にし、強固にしていかねばならない貴重な芽です。

朝鮮半島に強固な平和を構築するための道のりは、今、歴史的な一歩を踏み出したに過ぎません。

過去の不信と敵対の長い歴史を見る時、信頼を醸成し、朝鮮半島に平和を確固なとして定着させる過程は、時間と手間がかかる長い道のりにならざるをえません。

現在の朝鮮半島情勢は一言で言って、古いものを打破し新しいものが誕生する歴史の瞬間だと言えます。

科学の世界と同じように政治の世界でも、新しいものの誕生は古いものとの闘いを伴わざるをえません。

去る6月、ここシンガポールのセントーサ島で朝米首脳は、失敗を重ねてきた過去の方式から大胆に抜け出し、まったく新しい方法で新しい歴史を記していくことについて世紀的な合意を成し遂げました。

その結果、第1に新しい朝米関係の樹立、第2に朝鮮半島における恒久的で強固な平和体制の構築、第3に朝鮮半島の完全な非核化、第4に米軍遺骨発掘及び送還を内容とする歴史的な朝米共同声明が採択・発表されました。

朝米共同声明を、責任感をもって誠実に履行していこうとする朝鮮民主主義人民共和国の決心と立場は確固不動です。

朝米共同声明の完全な履行を担保する根本的な鍵は信頼醸成です。

信頼は一朝一夕に積み上げられる感情ではなく、朝米間の十分な信頼醸成のためには、必ず双方の同時的な行動が必要不可欠であり、できることから一つずつ順次的に行っていく段階的な方式が必要です。

もし米国が、共同声明の第3と第4条項のみを先に履行することを主張し、われわれが第1と第2条項だけを先に履行することを主張するなら、信頼は醸成されにくくなり、共同声明の履行そのものが難関にぶつかるでしょう。

信頼醸成を先行させ、共同声明のすべての条項を均衡的に、同時的に、段階的に履行していく新たな方法だけが、成功できる唯一の現実的な方途であるとわれわれは信じています。

米国が、われわれをして心おきなく近寄ることができるようにしてくれる時、われわれもまた、米国に心を開きそれを行動で示せることができるようになります。

これが、朝米両国首脳が成し遂げた合意精神の根本的核心です。

憂慮すべきは、米国内で首脳部の意図とは異なり、古いものに戻ろうとする試みが、執拗に表出され続けていることです。

朝鮮半島の非核化のために、核実験とロケット発射実験の中止、核実験場廃棄など、われわれが主動的に先にとった善意の措置に対し呼応するどころか、米国ではむしろ、わが国に対する制裁を維持すべきとの声がさらに高まっており、朝鮮半島の平和保障の初歩の初歩的措置である終戦宣言問題からも後退する姿勢を見せています。

ましてや、今年9月に迎える朝鮮民主主義人民共和国創建70周年の慶祝行事に、他の国々が高位級代表団を送らないよう圧力をかけるような、極めて穏当でない動きまで現れています。

焦りは決して信頼醸成の助けにはならず、特に一方的な要求にだけにしがみつくのは、信頼ではなく逆に不信だけを甦らせることになります。

朝米共同声明が、米国の国内政治の犠牲物にされ朝米両首脳の意図とは異なる逆風が生じることを許してはなりません。

われわれはすでに、米国が建設的な方案を持って来るならば、それに相応する何かをする考えもしていたが、米国が、われわれの懸念を払しょくする確固たる用意を行動で示さない限り、われわれだけが一方的に先に動くことは絶対にないでしょう。

朝鮮のことわざに「ゆっくりでも牛の歩み」という諺がありますが、朝鮮半島の非核化を実現するためには、一つ一つの段階的な同時行動を通じ、信頼を着実に積み上げていくことが最も速く確実な近道です。

ASEANが地域協助機構として発足して以来、今日のように親善と協助の雰囲気が溢れる機構に、国際的な尊敬と信頼を受ける機構に発展するために50年以上の歳月がかかったし、地域の平和と安全に対する国際的協調のために、朝鮮民主主義人民共和国がASEAN地域フォーラムに加入して以来、今日のような朝鮮半島情勢の画期的な転換を目撃することになるまで、18年という期間がかかったという歴史的事実を想起してみるべきでしょう。

議長先生。

朝鮮民主主義人民共和国は4月、経済建設に総力を集中させる新たな戦略的路線を選択しました。

わが国で経済が興隆し人民の生活が高まれば、地域全体の平和と安全、経済成長のために良いことはあっても、決して悪いことはないでしょう。

その実現のため、われわれはこれまで以上に朝鮮半島とその周辺の平和的環境を必要としています。

国際社会は、当然、われわれが非核化のために取った善意の先行措置に対し、朝鮮半島の平和保障と経済発展を鼓舞し促す建設的な措置で応えるべきでしょう。

私はこの場を借りて、会議に参加したASEAN地域フォーラムのすべての加盟国が、苦労の末にもたらされた朝鮮半島情勢転換の世紀的機会を大切にして、朝鮮半島問題の根源的解決に役立つことをするという期待と確信を表明するものです。

ありがとうございました。

(了)

●「朝鮮中央通信社」(日本語) http://www.kcna.kp/goHome.do?lang=jp

●エルファテレビ  http://www.elufa-tv.net/


是非アクセスしてご覧下さい