コリアニュース №846(2020.7.10)
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朝鮮労働党中央委員会の金與正第1副部長の談話(全文)(7月10日)

私はこの数日間、米国人が連日発信しているわれわれに関する怪異な信号をニュースで聞いている。

ひいては、朝米首脳会談の可能性まで示唆することになった米国人の心理変化をテレビ報道で興味深く視聴するのは、朝食時間の暇つぶしとしては申し分なかった。

あくまでも、わたし個人の考えだが、よくわからないにしても、朝米首脳会談のようなことが今年にはあり得ないと思う。

しかし、また分からないことでもある。

両首脳の判断と決心によって、どんなことが突然起こるかは、誰にも分からないからである。

しかし、明白なのは朝米首脳会談が誰かの言葉通り必ず必要であるなら、米国側にだけに必要なことであって、われわれには全く非実利的で無益だという事実を念頭に、そのようなことについて占ってみるべきであろう。

朝米首脳会談が実現されたとしよう。

米国はわが指導部との対話継続だけでも安堵感を持ち、再び首脳同士の親交によって担保される安全な時間を稼ぐことができるだろうが、われわれには米国との協商で得れるいかなる成果もなく、期待さえもしていない。

私は、朝米間の深刻で激しい対立と解決できない意見の相違が存在する状態で、米国の決定的な立場変化がない限り、今年中にまた今後も朝米首脳会談は不要であり、最小限われわれには無益であると考える。

さらに今年中の朝米首脳会談は、その可能性如何にかかわらず、米国がいくら望んだとしても、われわれは受け入れてはならないと思う。

その理由を簡単に三つにまとめるなら、第一に、それが必要なら米 国側にのみ必要であってわれわれには無益だということであり、第二に、新しい挑戦を試みる勇気もない米国人と対座しても再びわれわれが時間のみを費やすだけであり、辛うじて維持されてきた首脳同士の特別な関係まで損なわれる危険があるからであり、第三にクズのようなボルトンが予言したことなので絶対にそうする必要がないからである。

実際に、米国にとって直ちに必要なのは首脳会談自体やその結果ではなく、われわれとの関係で首脳同士の親交をもって自分らの政治的災難の種となり得ることが起こらないよう、われわれを落ち着かせ、足首をつかんで安全な時間を稼ぐことに目的があるのだろう。

そして、首脳会談をすぐに行っても、それがまた誰かのうんざりする自慢の種にだけ利用されることは明白である。

米国は、大統領選挙の前夜にまだ受けていないクリスマス・プレゼントを受け取ることになるかもしれないと、心配しているのだろう。

私は、米国がそのような厄介なことにぶちあたって困惑するか否かは、全的に自分らの行動次第にかかっていると思う。

時をかまわず退屈になれば、あちこちで底意地の悪いことを吐き散らし、われわれに対する経済的圧迫や軍事的威嚇など無駄なことにだけ執念を燃やすなら、何が起こるか分からないであろう。

私は、そのようなことの有無に関するいかなる情報も持っていないが、米国がわれわれに発信する様々で危険な圧迫性言動をわが指導部がいつまでも座視しないということだけは確かだと考える。

しかし、現在のところ米国が極度に恐れることが起きていないことを見ると、恐らく、わが委員長同志と米大統領の格別な親交が十分作用しているという気もする。

こんな時に、米国が不安といら立ちのあまり、みずから下手に、われわれの重大な反応を誘発する危険な行動に出るなら、寝ているトラを起こすようなことになるだろうし、結果が不愉快なことになるということは明白である。

最近になって、米国が朝米間の実務協商のテーブルや首脳会談テーブルのドアーを叩いている基本目的を正しく見抜かなければならない。

米国は、対話のドアーを開けてわれわれを落ち着かせ、安全な時間を稼ぐことを願っている。

そして、米国は心のうちではハノイでのような協商条件にでも戻りたいのかも知れない。

今になって振り返れば、米国はまさにその時の2019年はじめ、ハノイで部分的な制裁を解除するようなふりをしながら、いくらでも、われわれの核中枢を優先的に麻痺させ、われわれの将来的な核計画を混乱させうる可能性を持っていた。

その時、われわれは取引条件が合わないにもかかわらず、危険を冒してでも制裁のくさびを断ち切り、一日も早くわが人民の生活向上を図ろうとして一大冒険を試みた時期だったと言える。

しかし、2019年6月30日、板門店で朝米首脳会談が開催された時、わが委員長同志は、「北朝鮮経済の明るい展望と経済的支援」について説教し、前提条件として追加的な非核化措置を求める米大統領に、「華麗な変身と急速な経済繁栄の夢をかなえる」ため、われわれの体制と人民の安全と未来を、担保のない制裁解除などとは絶対に交換しないことと、米国がわれわれに強要してきた苦痛が米国に反対する憎悪に変わり、われわれはその憎悪をもって米国主導の執拗な制裁封鎖を切り抜け、われわれの方式で自力で生きていくことをはっきりと明らかにした。

その後、われわれは制裁解除問題を米国との協商議題から完全に切り捨てた。

私は、「非核化措置対制裁解除」というこれまでの朝米協商の基本テーマを今や「敵視撤回対朝米協商再開」の枠組みに正すべきだと考える。

制裁を加えるからといって、われわれが生きられないわけでもないのに、なぜ米国に引きずり回されなければならないのかということである。

米国が今になってハノイの会談テーブルにのっていた一部制裁解除とわれわれの核開発の中枢神経である寧辺地区のような大規模核施設の永久廃棄を再び取り引きするという愚かな夢を抱かないことを願う。

トランプ米大統領に対するわが委員長同志の個人的感情は疑う余地もなく固くすばらしいが、わが政府は現米大統領との関係にしたがって対米戦術とわれわれの核計画を調整すべきではない。

われわれは、トランプ大統領も相手にしなければならないが、それ以降の米政権、ひいては米国全体を相手にしなければならない。

ここ数日間、米国の高位当局者らの発言だけを見ても、大統領との関係とは無関係に、われわれがこれからすべきことが分かる。

米国務省が対話意志を披歴するかと思えば、大統領まで出てきてわが指導部とのよい関係を重ねて明らかにし朝米首脳会談の可能性まで示唆する一方で、米国防長官なる者は、またも「CVID」なるものを云々し、わが国に向かって「ならず者国家」という敵対的発言をはばからなかった。

大統領とその下でおかしく食い違う言葉が出ているのが、意図的な奸計なのか、大統領の不確実な権力掌握力から生じるものなのかは評したくない。

とにかく、朝米両首脳の関係がよいとしても、米国はわれわれを拒否して敵視するようになっている。

トランプ大統領との関係だけを考えて、われわれがしてはならない失敗は絶対にしてはならないということを警戒すべき時である。

最近米国が、対朝鮮制裁に関する大統領の行政命令を1年間延長する一方、朝米関係の改善に先だって「人権問題」が「解決」されるべきだと喧伝し、われわれの「人権実態」に言い掛かりをつけたり、わが国を「最悪の人身売買国家」、「テロ支援国」に再指定するなど、われわれをことごとく刺激しているが、これだけ見ても米国の対朝鮮敵視が決して撤回されていないことがよく分かる。

われわれに対する体質的拒否感が「風土病」になってしまった米国が現在の大統領選挙「危機」を免れたとしても、その後、われわれに向けて取る数多くの敵対的行動を予見しなければならず、われわれは今の時点で現執権者との親交よりも、今後絶え間なく続く米国の対朝鮮敵視に対処できるわれわれの対応能力の向上についてより悩むべき時であると考える。

われわれは、米国からの長期的な脅威を管理し、そのような脅威を抑止し、その中でわれわれの国益と自主権を守り抜くための将来的な計画を立てなければならず、実際の能力を強固にし、不断に発展させていかなければならない。

現在、朝米間の非核化協商を再開しようとする試みは、米国が困って持ち出している問題であって、われわれが困って望んでいる問題ではない。

会談のテーブルで、何かをどうにかして、もっと奪い取ろうということだけを考えている米国とはすぐに対座する必要はなく、米国の重大な態度変化をまず見て決心してもよい問題であると考える。

米国は、われわれの核を奪おうと頭を絞るのではなく、われわれの核が自分らに脅威にならないようにすることに頭を絞る方がより容易で有益であろう。

われわれには米国を威嚇する考えが全くなく、それについては委員長同志もトランプ大統領に明白な立場を明らかにしたことがある。

ただ、われわれに手出ししたり言掛りをつけたりさえしなければ、万事がスムーズに運ぶであろう。

われわれは、決して非核化しないということではなく、今はできないということをはっきりさせておくし、朝鮮半島の非核化を実現するには、われわれの行動と並行して他方の多くの変化、すなわち不可逆的な重大措置が同時に取られてこそ可能であるということを想起させる。

他方の多くの変化という時、それは制裁解除を念頭に置いたものでないことを明確にしておきたい。

私はもともと、南朝鮮に向けてならともかく、米国人に向けてこのような文章を書くことを望まなかった。

最後に、数日前テレビ報道で見た米国の独立記念行事に関する所感を伝えようと思う。

可能であれば、今後、独立記念行事を収録したDVDを個人的にぜひ手に入れようと思っていることについて、委員長同志から許諾を得た。

委員長同志は、トランプ大統領の活動で必ずよい成果が出ることを願うとの自身のあいさつを伝えるようにと述べた。

(了)

●「朝鮮中央通信社」(日本語) http://www.kcna.kp/goHome.do?lang=jp

●エルファテレビ  http://www.elufa-tv.net/


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